がらんとした部屋が、なんだかとても悲しかった。

祖父の遺品整理を東京郊外で行なうため、祖母が暮らすマンションを訪問しました。94歳で亡くなった父方の祖父は、死の数年前からホームに入っていました。認知性が進み、長年連れ添った祖母に暴力をふるうようになったための措置であり、ホームに入ってからは症状も落ち着き、離れて住んでいたわたしだけではなく、頻繁に顔を出していた実の息子である父も臨終には間に合いませんでしたが、穏やかな最期だったと聞いています。そんな祖父の遺品を整理するため、祖母が暮らすマンションを父と二人で訪問しました。

 

川沿いにある10階建てのその古いマンションは、長年住む人も多く、高齢の母が通うホームも近くにあります。川沿いから吹きぬける風は夏でもクーラーいらず。訪問するたびに「これならばあちゃん独り暮らしでもいいか」なんて思っていたのですが、やはり元気なようでいて手の行き届かないところもあり、祖父の死を機に大々的に片づけることにしました。ホームに入るまで祖父が寝室として使い、その後祖母が放置していた6畳間を中心に片づけます。

 

ホームに入る前に洋服は整理しており、わたしが手伝う前に父がベッドなどの大物を片づけていたので、後は僧侶だった祖父が集めていた本や旅先で手に入れたらしい謎の置物、本棚を片づければ終わりです。大人二人で取りかかって、あっという間にがらんとした部屋。田舎から出てきた祖父が数十年過ごした部屋。子供のころちらりとのぞくたび、モノにあふれていたあの謎めいた部屋は、こんなに小さく、あっけなくなにもなくなるんだなと、部屋の戸口でふと物悲しさに襲われました。

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